ぼーちゃんの英国医学留学な日々

2019年4月~Royal Brompton Hospitalに臨床留学中の循環器内科医のブログです

ここがヘンだよ!イギリスの外来

更新、ご無沙汰してしまいました。

母が先週の14日に日本に帰国してしまったため、一人暮らしになって1週間が経過しました。一応、毎日朝お弁当を作ったり、病院帰りにスーパーに寄ったり、なんとか衣食住できているぼーちゃんです。

 

昨夜は先輩fellowのPabroの送別会のため、みんなでイタリアンレストランで食事しました。

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レチシアは自撮りが上手い!

参加者のうち3人がイタリア人でしたので、彼らとぜーんぶ同じメニューで頼みました(笑) しかし店員さんもほぼイタリア人だったようで、何より驚いたのが、運んできた前菜盛り合わせの一部、小さなフライパンに入っていた煮物?っぽいものを私とレチシアの足元に盛大にぶちまけてくれたウェイターさんが「Oh, you are very lucky!」と言ったこと!間一髪、レチシアにもわたしにも食事がかからなかったことを言ったようですが。。。

???

ラッキーだと?

いや、その前にまずは謝るところでは!?

呆気にとられるぼーを尻目に、簡単に床を拭いたまま、特に代わりの料理も持って来ずそのまま。。。

ええ、皆さん!これがヨーロピアンなのであります!ここで怒ってはいけないのです!(笑)

 

ま、こちらに来てだいぶぼーも辛抱強くなりました。あまり自覚はしていませんでしたが、日本人は総じてせっかちできっちりした国民のようです。

何しろこちらでは、メールは返ってこないのが当たり前、データは送られてこないのが当たり前、修理を頼んでも来ないのが当たり前!2~3回、あの手この手でアプローチしないと、必要なものは手に入りません!

どこかのブログに、イギリスとは「待つ」ということが人生の一部であると自覚させてくれる国、なんて書いてありましたが、それをひしひしと実感する日々です。

なので、たまに日本の医局秘書さんとかにメールして数時間後に返事が来たりすると、うっかり感動してしまうのです(笑)

 

さて、ところで今日はイギリスの外来の不思議を見ていきたいと思います。

イギリスではご存知かもしれませんが、国民健康保険のかたちが日本とは若干異なり、NHSという国立病院は皆がほぼ無料で受診できることになっています。そして医者の種類は、はっきり「家庭医=GP」と「専門医=Consultant doctor」に分かれており、患者さんは自分の登録したGPをまず受診し、必要があるときのみ専門医へ紹介されるという仕組みになっています。もちろん急患センターみたいなのは別にあり、基本的に専門医が救急外来や一般患者さんを見ることはありません。

そしてRoyal Bromptonの外来は、すべて専門外来です。

なぜか外来は、病棟からは2ブロックほど離れた全然違う建物にあります。普通の歩道を歩いていくことになるので、雨の日や寒い日は最悪です(;^_^A

はっきり言って、専門外来はほんとに少ない人数しか見ません!

10~13時の午前と、14~17時の午後に分かれているのですが、1時間に2人くらいのペースで見れば普通に終わっています。。。あり得ん(-_-;)

だいたいが1~3年毎の定期follow upに来る患者さんが多いのですが、特に特定の患者さんを特定のDoctorが見るわけではないようで、何人かで並行して外来を行い、ファイルがまわってきた順番に見ているようでした。なので誰に当たるかはその日の運次第☆みたいな感じです。

患者さんはだいたいその日か前の週くらいにエコーやら心電図やらを済ませているので、その結果をチェックし、患者さんを自分で呼びに行きます(放送システムとか無いです)。患者さんの話をまず聞いて、その後診察ベッドに案内して血圧を測ったり、聴診したりします。ベッドの上には変なキッチンペーパーみたいなのが頭のほうからびろびろ~っと伸びていて、ひとり診察が終わるとびーっと引っ張って新しい紙に替えます(写真撮ってくればよかった!)。診察が終わると、仕事はできているか、運動しているか、タバコは?アルコールは?とお決まりの質問が続き、検査結果の説明をします。

そこで驚くのが、ほとんどの患者さん(おじいちゃん、おばあちゃんも含め)が自分が飲んでいる薬の名前をスラスラそらで言えることです!!カルベジロールとラミプリル、とか、フロセマイドとアスピリンだけだよ、とか。。。信じられません!!

あと教授の外来だと「今日ここに何のために来たかわかる?」という質問に、ほとんどの患者さんがスラスラ自分の手術名を答えられるのです!!

なんと!!

患者教育のたまものなのでしょうか。東大にいたときに移行期支援の研究プロジェクトに関わらせてもらっていたのですが、まさにこれを目指していたのだ!と感動しました。もう少しコミュニケーション能力が上がったら、どうやって教育しているのか秘密を探りたいと思います。

すべての診察が終わると、患者さんに質問が無いか尋ね、黄色い紙にしゃしゃっと何かを書いて「じゃ、次回は18か月後に」とか言って患者さんに渡します。次回検査がある人は検査の予約券も渡します。患者さんがそれを受付に持って行くと、そちらで予約の手続きをしてくれるようです。

 

そしてDoctor側で驚くのが、奴ら外来中に全然カルテを書きません!!

手元にちょっと血圧とかメモは書きますが、だいたいまずもって回ってくる患者さんのファイルに前回のカルテとかが一切無いのです。ただ予約券みたいなのと、予約券に貼る患者さんのバーコードシールみたいなのが入っているだけ。

はて???

と最初は思っていましたが、実は彼らは外来の最後に所見をボイスレコーダーに吹き込むだけなのです!!

PCにそれ用のソフトが入っているようで、患者さんのIDを入力して、あとはぼーが全然聞き取れないような早口で「何月何日患者さん誰それ、症状、身体所見、検査結果、今後のプラン。。。」を録音します。するとどうやら医療秘書さんがそれをLetterに起こし、PC上に取り込んでくれるようなのです。なので、前回のカルテはPC上の前回の日付のLetterを見ると書いてあるのでした。最後にDoctorのサインも入っているので、どこかのタイミングで自分の吹き込んだ内容と一致しているかチェックする時間があるのでしょう。

 

う~ん。。。分業制すごいなあ~。

日本の外来なんて、ACHD専門外来だって1時間に5~8人くらいは見ないと終わらないし、カルテ書きながらだし、次回の予約も検査の予約もぜーんぶ自分で取らなきゃいけないし。。。外病院の一般外来なんて、1時間に10人以上は見ないと終わらないですもんな~。

ちなみに、看護師さんも病棟や外来で患者さんのお世話をするスタッフの他に、プロフェッショナルチームみたいな人が何人かいて、一緒に外来に座っていたりします。退院サポートとか、自宅でのfollowとかを自動的にしてくれるようで、Doctorが退院調整したりすることは無いようです。

なんと羨ましい。。。

日本もこれくらい分業にしてくれないと、医師の労働環境は改善しないのだろうなあ。。。などと考える日々です(;^ω^)

 

 

さて、ちなみに今日はオーベンのひとりであるDr. Kempnyの外来を初めて見に行きました。ぼーにとっては研究もこの先生のもとですることになり、カテも指導医になる予感がする、キーパーソンな先生です。

実はFellow仲間のうちでは「愛想が悪い、何言ってるかわからん」とオーベンの中では不評な彼。。。おそらくシャイなのと、あんまり口を大きく開けてしゃべらないのが、南欧諸国の皆さんには合わないんでしょうが、ぼー的にはいちばん「日本の上司に近い」と親近感の沸く御仁です(笑) ちょっと髪の毛は寂しいですが、ぼー的にはお肌がきれいなステキ紳士です♡

彼の外来はひとりしかfellowが入れないので、今日は初めてぼっちで見学していたのですが、ぼーが英語苦手なのをわかってくれているので、かなり丁寧に説明してくれました。しかし緊張していたので、Ebstein奇形の合併症を訊かれたのにWPWを落とすという大失態。。。ううっ( ;∀;)

そしてあんなに「不愛想」と言われている彼が! 患者さんの合間に、急にGoogle mapを開き「Kanaの病院どこ?」と!Σ(・ω・ノ)ノ!

あわてて、えーと、ここです。東京からは電車で1時間半くらいかかります。新幹線通ってますけど、Unfortunatelyにもうちの町には止まりませーん。 と説明。すると、Street viewで自治医大の前に降り「大きいし、いい天気だね!」と笑顔でいろいろおしゃべりしてくれました。ぼーの家族のこととか、何時間くらい働いてるの~?とか。

今日の外来ではやたら患者さんとドイツ人Drの話をしていることが多かったので、思い切ってドイツ出身なんですか?と訊いてみたら「生まれはポーランドなんだけど、すぐにドイツに移ったから二重国籍なんだ。パスポート2冊持ってるよ」とのこと。

おお。。。いちばんイギリス人っぽいと思っていたのに、またイギリス人じゃなかった。。。

今のところイギリス人のDrには一人も会ってない気がします(笑)

 

そして、最後のほうに来たEbstein奇形の術後患者さんのときに「Drウムラ知ってる?」と訊かれ、ウムラ???誰???と戸惑っていると「15年くらい前にここでConsultant surgeonしていた日本人だよ」と。

その場でネットで見せてくれたのは、奈良県立医大の上村秀樹教授でした。

え~!!そんな方がいらしたんだ!!と驚いていたら、患者さんのおじさんも「Drウムラ(Uemuraはウエムラとは読めないみたいです)に手術してもらってから別人のように元気だよ!彼の手術は上手だったし、礼儀正しく親切ですばらしい外科医だった!」と絶賛!「きみ、日本から来てるんだって?帰って彼に会うことがあったらぜひよろしく言っておいてくれよ~」と満面の笑顔で帰って行かれました。

す、すご~い!!と思わず感動するぼー。(日本人がまったくいない生活をしているので、愛国心maxな状態/笑)

Alex先生!

も、もしかして、この患者さんのファイルをわざとチョイスしてきてくれたの。。。と思わず胸キュンしてしまった午後でした♡